毎回、パッケージデザインにかかわる「ぱっけーじん」にご登場いただき、さまざまなテーマについて語っていただく特集企画。第2回は、資生堂クリエイティブ株式会社の松石さんと近藤さんが登場! マジョリカ マジョルカ(MJ)の誕生秘話や開発のウラ側など、興味深いエピソードをたくさんお聞かせくださったお二人ですが、そもそも、なぜパッケージデザインに興味をもったのでしょうか? そしてMJの未来は? 気になる質問をすべてぶつけてみました!

〈プロフィール〉
松石 翠さん
2008年入社。マジョリカ マジョルカ パッケージクリエイティブディレクター(PCD)

近藤 香織さん
2005年入社。マジョリカ マジョルカ クリエイティブディレクター(CD)

 

ドールで遊んだ経験や、洋裁をする母の姿を見て育った経験――今の仕事につながる「原点」

――ここで、お二人の原点について質問します。なぜ松石さんと近藤さんは、パッケージデザインに興味をもったのですか?

松石 私は子どもの頃から漫画とドールが好きで、たくさん買って部屋に飾っていたんです。

――コレクター気質だったんですね。

松石 そうですね。特にドールはいろいろなバージョンを集めるのが好きでした。それも一点モノより、量産品で髪の毛の色が微妙に違うバーションなんかが好きだったんです。ドールをカスタムして遊びながら、「自分も創ってみたいな」「熱狂させる側に行きたいな」と思うようになって。今思えば、あの時の思いが原点だと思います。

――近藤さんは?

近藤 私の原点は、母にあります。洋裁の仕事をする母を見て育ったので、自然と手を使ってモノを創ることが好きになりました。その後、大学に進学してグラフィックデザインを専攻して、資生堂クリエイティブに入社しました。

――パッケージデザインのやりがいはどこにあると思いますか?

松石 いくつかありますが、一つは、自分が手掛けた商品が店頭に並んでいるのを見た時。もう一つは商品の反応を知った時。実際、お店に行くと、MJの商品を手にするお客さまをお見かけすることがよくあります。どの商品が売れているのかわかるし、「自分がデザインした商品を使ってくれている」という実感があって、すごく嬉しいですね。

近藤 パッケージデザインって、コツコツと創り上げていく過程のなかに「命が宿る瞬間」があって、この瞬間に立ち会えた時にやりがいを感じます。そのせいか、パッケージを擬人化して「この子」と呼ぶパッケージデザイナーはとても多いんですよ。

松石 SNSなどで、MJのファンの方が私たち以上に商品を深く考察しているのを知って、嬉しく思うこともあります。「この商品は4色展開しているけれど、こういうテーマがあると思う、とか、これが“推しカラー”だと思う」と考察してくださっていて、「なるほど!」と思ったりしますね。

「私はこれが大好き!」と胸を張って誇れる趣味や経験が、皆さんの強みになる

――今後、MJをどのようなブランドに育て上げていきたいですか。

松石 MJはすでに確立されているブランドで、その資産は私自身の心に染み込んでいるし、MJならではの世界観を未来に繋げていくことが私たち創り手の使命なのかなって思います。パッケージデザインに特化して言えば、マスカラやチーク、アイシャドウといった商品の中身の魅力を、いかにしてパッケージを通して伝えるかが大事になってきます。色や機能がちゃんと伝わるデザインを目指していきたいです。

近藤 私は3歳の娘がいるので、娘が初めてメイクをする時にMJを使ってくれたらなと思っています。

松石 ステキ!

近藤 ありがとう。MJは歴史が長い分、お母さまと娘さんの二世代で愛用してくださっているお客さまもたくさんいらっしゃるんです。お母さまが若い頃に使ったMJを娘さんも使うようになって、2人でキャッキャッいいながらMJの商品に一緒にときめいて――。これから先も、このような光景をたくさん見ることができたら嬉しいですね。

松石 「MJのブランドを守りながら、発展させていかなきゃ」というプレッシャーはありますが、気負いすぎず、遊び心を大切にしたいです。近い将来、新しいメイクの技術が生まれるかもしれないし、パッケージデザインの見せ方も変わっていくかもしれない。MJの世界観を確保しながらも、好奇心旺盛にいろいろとチャレンジして、MJの新しい魅力を引き出していくつもりです。

――最後に、未来の「ぱっけーじん」にメッセージをお願いします。

松石 MJの商品開発をする時、妄想を膨らませてストーリーを考えていくのは本当に楽しくて、それは先ほどもお話したように、子どものころに収集していたドールで遊んだ経験が原点になっています。無邪気な心で好きなことに夢中になっていた経験が、今の仕事に生きているので、パッケージデザインに携わりたいと思っている方にも、「夢中になった経験」を大切にしてほしいですね。

近藤 松石が話したように、自分の好きなことを大切にしてほしい。好きなことに夢中になった経験があるからこそ、多くのお客さまが喜ぶものを提供できるのだと思います。

松石 「パッケージデザイナーになりたいから、パッケージデザインのことを知ろう」と最初から幅を狭めるよりも、好奇心旺盛にいろいろなことに興味をもってほしい。たとえ人が興味を持たないニッチな分野であっても、「私はこれが好き。これを突き詰めた」と胸を張って誇れる経験があると、それが皆さんの強みになると思います。

――すべての女の子の憧れのブランド「マジョリカ マジョルカ」のパッケージデザインや体験デザイン担当として活躍してきた松石さんと近藤さん。お二人のお話から、「ぱっけーじん」にとって最も大切なマインドが伝わってきたと思います。今、パッケージデザインを学んでいる方や、パッケージデザイナーとしてキャリアを歩み始めた方の参考になれば幸いです!

前編から読む:ブランドとデザイン・前編――マジョリカ マジョルカ誕生の経緯は?


マジョリピアドレッサーボックス

「20周年記念に特別なアイテムを詰め込んでセットを創りたい」とマーケティング部からオーダーがあり、マーケティング担当者とデザインチーム全員で構想を練って創り上げた商品です。ボックスに各商品をモチーフとした島々や、音楽やオーケストラに関連したイラストをあしらって、「20周年をお祝いする、今までとこれからを象徴する地図」を表現しています。(松石さん/近藤さん)