毎回、パッケージデザインにかかわる「ぱっけーじん」にご登場いただき、さまざまなテーマについて語っていただく特集企画。第2回は、資生堂クリエイティブ株式会社の松石さんと近藤さんが登場! 女の子が可愛くなるための美の女神の秘密の呪文をブランド名にしたメーキャップブランド『マジョリカ マジョルカ』のパッケージデザインと体験デザインを担当しているお二人に、ブランド誕生の経緯や、商品開発へのこだわり、パッケージデザインだからこそ実現できる表現についてお聞きしました。

〈プロフィール〉
松石 翠さん
2008年入社。マジョリカ マジョルカ パッケージクリエイティブディレクター(PCD)

近藤 香織さん
2005年入社。マジョリカ マジョルカ クリエイティブディレクター(CD)

 

今から20年前、Hanakoジュニア世代をターゲットに新商品開発プロジェクトが始動した!

――まずは、お二人のキャリアについてお聞かせください。松石さんと近藤さんは、いつ頃からマジョリカ マジョルカ(以下・MJ)の担当になったのですか。

松石 私は2008年に資生堂クリエイティブに入社し、2011年からMJの担当になりました。現在はMJのパッケージクリエイティブディレクター(以下・PCD)を務めています。

近藤 ちょうど松石がMJの担当になった2008年頃、MJのPCDを担当していました。今も別ブランドのデザインを担当していますが、MJに関してはCDとして主に顧客とのコミュニケーション施策として「体験デザイン」(※1)の構築に携わっています。

――2003年7月21日に誕生したMJは、今年で20周年を迎えました。ブランドが誕生した頃のことを覚えていますか?

松石 二人とも学生だったので、当時は消費者の立場からMJを見ていました。マスカラがすごく機能的で、世界観がとにかくかわいいなと思ったのをよく覚えています。

近藤 MJが発売された当初、大々的にテレビCMを打ち出していて、ファンタジックな世界観に惹かれました。ウェブサイトも凝ったつくりで、絵本を開いていくような仕掛けになっていて、「独創性に富んだブランドだな」と思っていました。

――ブランドが誕生した経緯については?

近藤 実は入社当初、私の隣の席に座っていた先輩が、MJのブランド立ち上げを担当していた方だったんです。彼女が話してくれたところによると、以前、若い女性に圧倒的な支持を受けていた『Hanako』という雑誌があって、雑誌を片手におしゃれを楽しむ女性をHanako世代と呼んでいたそうです。Hanako世代の次の世代――つまり「Hanakoジュニア世代に向けて新しいブランドを開発しよう」と考えたことが、ブランド誕生のきっかけだったそうです。

松石 Hanakoジュニアは、ハイブランドとリーズナブルなブランドのファッションをミックスして身に付けたりと、自分なりのおしゃれをカスタムして楽しんでいた世代です。

近藤 ちょうどコスメの世界では、アンティーク調のブランドが海外から輸入されて、注目を浴びていた時期でした。このような状況のなかで、女の子がワクワクするような独自の世界観を構築していきました。世界観はもちろん商品の機能性も高くて、当時の女の子たちの心を瞬く間につかんだと聞いています。

社内外のプロフェッショナルがチームを組んで、商品開発に挑む!

――MJは誕生直後から女の子の心をわしづかみにしていたのですね。では、MJの商品開発において、PCDはどのような役割を果たしているのですか?

松石 PCDは、パッケージデザインのクリエイティブ面を指揮する役割を果たします。商品のコンセプトはもちろん、発売後のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)も意識して、商品本体のデザインやパッケージのデザインに落とし込んでいきます。

――PCD以外に、どのようなメンバーが開発に関わっているのですか?

近藤 まず、マーケティング部の社員がMJブランドの決定権を持つ責任者としての「ブランドホルダー」を務めています。パッケージデザインに関しては、PCDの松石とCDの私、それからコピーライターやイラストレーター、アカウントでデザインチームを組んで対応しています。

松石 特徴的なのは、外部のクリエイターも加わっていること。資生堂クリエイティブの社員と外部のメンバーでチームを結成し、MJの商品開発に取り組んでいます。

――外部のメンバーも加わって開発を進めているんですね。

近藤 MJのデザインチームは長く担当しているメンバーが比較的多いのですが、たとえメンバーが交代しても、まるで呪文をかけられたかのように同じ世界観のものを創るので有名なんです。

――商品づくりにも、MJの魔法の呪文がかけられているんですね!

近藤 立ち上げメンバーがMJの世界観をしっかり確立しているので、ブランドを引き継いだ私たちも世界観やストーリーの軸をぶらさずに、新商品に繋いでいけるのだと思います。

松石 ブランドの世界観を大切にしながら「ストーリー」もていねいに創り込んでいます。たとえば20周年記念に発売した「マジョリピアドレッサーボックス」は、企画段階からメンバー全員でミーティングを重ね、「商品を奏でているイメージがいいね」「それなら、オーケストラはどうだろう」と、ワイワイ話しながらイメージを固めていきました。

近藤 「こういうテーマで創っていったら、心がときめくよね」と、みんなで話し合いながら決めていく。メンバー全員で企画からデザイン、発売後のコミュニケーション施策まで含めて考えていくのが、MJのスタイルなんです。

――誕生から20年経った今も、変わらずに女の子の心をわしづかみにしているMJ。その秘密が少しだけ見えてきたような気がします。中編では、MJの商品開発についてさらに詳しくお聞きします!

*1 従来の広告コミュニケーションの枠組みにとらわれず、お客さまの体験すべてを統合的にデザインする

ブランドとデザイン・中編――マジョリカ マジョルカが長く愛されている理由は?―― へ続く


パフ・デ・チーク/シャドーフラッシュ

パフ・デ・チークはマカロン型の缶のパッケージで、マカロンの形の再現にこだわった一品です。シャドーフラッシュは4色展開のアイシャドウパレット。コレクターのお客さまを意識して、商品を開いて並べると、MJの魔法の世界の地図が完成する仕掛けにしました。どちらもこだわって創ったので、とても印象に残っています。(松石さん)