イタリアの「ナターレ」と「パッケット」
村木 貴久子
ジー·ピー·エス株式会社 デザイン部 / GOJO PAPER GALLERY TOKYO
学生の頃から美術と並び語学が好きで、当時習っていた中国語をきっかけに、中国・上海でデザイナーとして6年間働いた。そこで知り合った夫が、イタリア・ナポリの出身で、それから15年ほどの間、何度とイタリアを訪れ、2023年はクリスマスに家族で訪れた。
ナポリはピッツァ発祥の地で、パスタやドルチェ(デザート)が美味しい街。イエス・キリストの誕生日のナターレ(クリスマス)には教会に通う人々も多く、街はイルミネーションが輝いている。12月24日・25日は家族や親戚が集まり、一緒に食事を楽しみレガーロ(プレゼント)を渡し合う。クリスマスシーズンがあける1月6日のべファーナ(公現祭)までの期間、アクセサリー・化粧品・香水など沢山のギフトが陳列し豪華で煌びやかなパッケージが店頭に並び、ゴールドに輝く袋や包装紙に包まれ手元に届けられる。
街中にファーマチア(日本でいう薬局+ドラッグストア)があり、白衣を着た薬剤師が常駐し、薬や化粧品などその人の症状にあった商品を勧めてくれる。日本とは違い、処方箋で出される薬は個箱に入った規格サイズ品で、白紙の箱に4色印刷と点字などが入ったシンプルなものが多い。またヨーロッパの他国でも販売される商品には多言語で商品名や使用方法などが記載されているものが多い。
ナターレのパスティチェリア(スイーツ店)では、ドーム型などの大きな紙箱にリボンがつけられたパッケット(パッケージ)のパネットーネが山積みされる。ラム酒漬けのババやスフォイヤテッラの焼き菓子が有名なお菓子で、持ち帰る際はトレイ型でエンボス加工された金色の台紙の上に並び、メタリック印刷が施されたロゴ入りの包装紙にリボンがかけられる。
普段、シルバー蒸着紙など特殊加工された紙を用いてパッケージをデザインすることが多く、素材や質感、印刷のちがう海外製品をみていると、紙などの環境にやさしい素材で肌触りもよく豪華にみせる様々な工夫が施されているのを実感する。
ヨーロッパでは、SDGsにも15年程前から注目されていて、環境配慮も進んでいる。スーパーのレジ袋はコンポストが可能な薄い素材でできている。絵本や積み木のおもちゃなど木や紙素材には当たり前のようにFSCマークがついている。また、子供服など洋服をプレゼントする時は、サイズ交換できるよう値段記載のないレシートが必ずついてくるが、このレシートにも化学物質を使わないBRAフリーの環境配慮マークが裏に描かれている。
近年紙コップにはリサイクルマークに加え、カメのイラストが描かれたマークが入っている。カトラリーは土に還るバイオプラスチック、飲料ボトルは開けた時に蓋が取れないよう工夫されている。
サラミやチーズなどを主に販売しているサルメリア(食料品店)では、包装紙に食品が直接のせられクルクル巻かれた状態でラベルを貼られる。
ゴミの分別はおもに紙(CARTA)・プラスチック(PLASTICA) ・ガラス (VETRO)・生ゴミ(UMIDO)・不分別ゴミ(INDIFFERENZIATA)に分かれている。着なくなった洋服を回収できるリサイクルボックスが近くに設置されている所もあり回収されリユースされる。
イタリアのデザインはどの分野でも、タイポグラフィやイラスト、形や色の使い方など美しさを感じるものが多い。
イタリア人は学生の頃から美術史や建築を学び身近に美術に触れる環境がある。それは、住んでいる家を訪れると納得する。飾られている絵画や家具、食器など日常からアートや美と触れ合いデザインを大切にする生活が根付いている。
いつもと違う場所や様々な価値観の人に会うことは、生活に豊かさを与えてくれる。イタリアのデザインをみて経験した事をこれからのデザインに活かしていきたい。