大阪からクリエイティブを発信・後編-展覧会制作は、涙が出るほど面白い
今回の「ぱっけーじん」は、関西在住のパッケージデザイナー集団「PAKECTION!(パケクション)」を主宰する三原美奈子さんです。パケクションはメンバー全員が日本パッケージデザイン協会会員。2008年の結成以来、趣向を凝らしたパッケージデザインの展覧会を継続的に開催し、好評を博してきました。
中編のインタビューでは、パケクションの誕生からここまで長く続いてきた理由、そして最新の展覧会情報までたっぷりとお聞きしました。後編では、10年以上続けてこられた理由、これからの野望についてお話しいただきました。
プロフィール
三原美奈子(みはら・みなこ)さん
京都精華大学美術学部デザイン学科VCD専攻卒業後、
デザイン事務所を経て2010年三原美奈子デザイン設立。
さまざまな包材に対応し、箱の設計・構造から、
コストとマーケティングを見据えたパッケージデザインを提案。
展覧会や講演、ワークショップも多数開催。
(公社)日本パッケージデザイン協会理事
16年間、展覧会をやめようと思ったことはない
――ここまで結成からの約16年間を振り返ってきましたが、10年以上続けてこられた理由、モチベーションは何だったのでしょうか?
私自身は、続けるのが得意なんじゃないかと思っていて。続ける方法を見つけるのが得意なのかもしれないです。続けられる形に変化することができたから、続けてこられた。
――今までのやり方に固執するのではなくて、「こうしたら続けられるんじゃないか」というのを考えて、実践してきたから続いている。
そうですね。仕事ではないから、皆のモチベーション次第なんですよね。皆が気乗りしなかったら、楽しくなかったら、やらない。「私そういうのやりたくない」という人が1人でもいたらやめます。仕事でもプライベートでも、いろいろと状況は変わりますし、なるべく皆がやりたいという気持ちになれる方法を考えてきました。しんどいときはやらなくていい、休めばいいと思います。ソロ活動をして、また再結成するようなものですね。
――三原さん自身は展覧会をやめようと思ったことはないのでしょうか?
ないです。やっぱり世の中にパッケージを発信できるところはまだまだ少ないし、パッケージデザインがもっともっと認知されて、皆にパッケージの面白さを知ってほしいので、展覧会をやめたいと思ったことはないんです。
それに、展覧会後は必ず課題も見つかります。
打ち上げで、もう次回の展覧会について話し合うこともしばしばです。
個人的には16年作品を作り続けていても、自分の作品で納得できたことは少なくて、毎回もっといいものを作りたいという気持ちになります。
それも続けるモチベーションの1つかもしれません。
何度も協力企業に足を運ぶ。だからこそ作品づくりが続けられる
――続けてきてよかったことは何でしょうか?
いろいろな協力企業さんと知り合えて、印刷や加工の知見が広がったことですね。これは仕事にも生きています。あと、つながりも増えました。パケクションを通じて知り合った会社さんに仕事を依頼したり、逆に仕事をいただくこともあります。
――企業と作品づくりでコラボする上で、意識していることはありますか?
先方のメリットを考えずに、できあがったデータを入稿して「やってください」という感じだと仕事と変わらなくなってしまうんですね。
「一緒に考えてもらえませんか?」というところから入ると、「デザイナーってこんな風に考えるんだ」とか「こういう風なやり取りを経てモノができあがるんだ」というところを体感してもらえるし、そこを価値として感じてもらえているのではないでしょうか。
パケクションのメンバーは、協力企業さんに何回も足を運びます。
メールだけでなくて、会ってコミュニケーションをとって仲良くなると、先方もいろいろと提案してくださるんです。
できないことがあったとしても、「代わりにこんなのはどうだろうか」といった話ができるようになるんですね。
だから、本当にしょっちゅう会いに行くようにしていますね。
――今後、協賛・協力したい!という企業さんがいらっしゃったら、ウェルカムですか?
はい、ウェルカムです!今まででもこちらからお願いするときもあれば、先方から声をかけていただく場合もありました。
企業さんは「こういう技術を使ってほしい」といった要望をお持ちだと思いますので、ある程度PRしたい点を汲んで、デザインに取り入れています。「作品を作ってくれるんだ、ラッキー」というのでは、続かないですよね。
涙が出るほど面白いことが何度もあるから、やめられない
――最後に、これからの展望・野望を教えてください。
海外や今まで行けてない地域でも開催できたらいいな、とは思いますね。でも、あんまり野望とかないんです。計画性もなくて、目の前にあることを楽しくできたらいいなと思っていて。
展覧会をやっていると、お腹がよじれるほど面白いことがあるんですよ。
今回の場合だと、チラシ用に80年代風のファッションでレコードジャケット風の写真を撮影することになっているんですが、そのために古着屋さんに行って、「あれ買った?」「これはあり?」「これ安いよ!」なんてやりとりしているのが面白くて。
――チラシのためだけの衣装ということですよね。
そうそう。1回しか着ません(笑)。
ずっと展覧会をやってきて、涙が出るほど面白い瞬間がいくつもありました。だからやめられない!楽しい!!
――メンバーの皆さんが楽しんでやっているというのが展示からも伝わってくるから、こちらもより楽しめるような気がします。
そうだと嬉しいです。
――今日は貴重なお話をありがとうございました。10月の「パッケージング・オールナイト展」、楽しみにしています!
次回展覧会「パッケージング・オールナイト展」参加メンバー
左から 三河内英樹 山内理恵 馬場良人 三原美奈子 髙木直也 齊藤桃子
パケクション
パッケージング・オールナイト展
2024年10月2日(水)~8日(火)
10:00~20:00(最終日は18:00まで)
心斎橋PARCOスキーマギャラリー
https://allnight.pakection.com
【次回展覧会参加メンバー】
三原美奈子(三原美奈子デザイン)
馬場良人(ばばデザイン)
三河内英樹(イングアソシエイツ)
山内理恵(ノアプランニング)
齊藤桃子(KAKAN DESIGN)
髙木直也(サン・クリエイト)
*らいん
これまでの展覧会及び作品制作に協賛・協力いただいた企業(順不同)
【協賛企業】
株式会社 竹尾
特種東海製紙株式会社
東海加工紙株式会社
大王製紙株式会社
ダイオーペーパープロダクツ株式会社
王子エフテックス株式会社
ダイニック・ジュノ株式会社
株式会社坂井印刷所
上六印刷株式会社
賛協社レーベル印刷株式会社
ツジカワ株式会社
株式会社Sakae Plus(旧株式会社サカヱ彫巧社)
大商硝子株式会社
本州印刷株式会社
新和印刷株式会社
村田金箔株式会社
有限会社日伸製作所
株式会社和光
シバタセスコ株式会社
株式会社鈴木松風堂
株式会社ユポ・コーポレーション
京セラドキュメントソリューションズ株式会社
有限会社S.G.T
【協力企業】
大昇印刷株式会社
株式会社中野木型製作所
有限会社山添
啓文社工業株式会社
東京紙器株式会社
村上紙器工業所
株式会社ダイム
大和印刷株式会社
今泉版画工房株式会社
寿精版印刷株式会社
ナベプロセス株式会社 大阪支店
ホークアイ株式会社
株式会社昭和丸筒
有限会社セキュリティプロダクツ
大光紙工株式会社
株式会社ユニオン紙器
株式会社ランデザイン
スタジオフィッシュ
株式会社七彩工房
株式会社Sharp Focus
K’s 井原 完祐
松田将歳写真事務所
アトリエカフエ
株式会社MIXER
日報ビジネス株式会社 大阪事業所
グラフィックデザイン: COSYDESIGN Inc
【越前和紙で作ってみたパッケージと雑貨展】
越前市
株式会社五十嵐製紙
池田水引
有限会社岩六製紙所
かなづや株式会社
株式会社越の磯
清水和紙株式会社
株式会社杉原商店
株式会社滝製紙所
福井県和紙工業共同組合
増田紙器工業株式会社
丸茂製紙
山田兄弟製紙株式会社
山田製紙所
山次製紙所
ディレクション:北條崇