毎回、パッケージデザインにかかわる「ぱっけーじん」にご登場いただき、さまざまなテーマについて語っていただく特集企画。第1回は、「AIとぱっけーじん」と題して、株式会社プラグの小川亮さんが登場。後編では、「AIとぱっけーじんの未来」を大胆予測していただきます!

より創造的に、よりおもしろいことを実現できる時代が到来し、パッケージデザイン業界がさらに元気になる!

――前回、小川さんが言おうとしていた「AI活用による一番の変化」について教えてください。

一言でいえば、AIは「ぱっけーじん」たちがより創造的に、よりおもしろいことに挑戦できるツールになっていきます。私は思うんです。今までは「デザインツール」の選択肢があまりに少なかったって。

そもそも、デザインツールと表現は相互関係にあります。相互関係とは、「こういう表現がしたいから、このツールを選ぼう」「このツールなら、こういう表現ができる」という具合に、お互いが相関し合う関係のことです。つまり、選べるツールの種類が少ないと、表現できることが狭まってしまいます。デザイナーそれぞれ表現できることが異なるのだから、それぞれが自分に合うツールを選べるようになってほしいし、AIがその役割を果たしてくれると思っています。

――AIと「ぱっけーじん」は、お互いに支え合い、助け合う「良い関係」になれるということでしょうか。

今、いろいろな業界がAIの活用を始めていますが、特にパッケージデザイン業界はAIに対する反応が早いように思います。もともと、AIに限らず、新しいモノが出てきても真っ向から否定しないニュートラルな感覚を持った人が多いんですね。このような業界の風土を追い風にして、「ぱっけーじん」たちが好奇心旺盛にAIを活用していけぱ、これまで以上にパッケージデザイン業界が元気になっていくと思います。

――今回のテーマの「核心」に入ってきました。AIがパッケージデザイン業界だけでなく、「ぱっけーじん」も元気にしてくれるのですね。

セミナーなどでパッケージデザイナーに会うと、少なからず「デザイナーの仕事がなくなるのでは」という声を聞きます。私はそんな人にこそ、「使ってみて!」と言いたいです。

「ぱっけーじん」の皆さんに知っていただきたいのは、「AIはあくまで表現をサポートするもので、AIがデザインの最終形をつくるわけではない」ということです。だから、パッケージデザイナーの役割は、AIが普及した後も基本的には変わらないでしょう。変わるのは、AIを使うことでパッケージに関わるすべての人が「表現としてのデザイン」を手に入れる、ということです。

ただ、現在生成AIがつくるデザイン案はまだまだ完成度が低いもので、デザイナーがしっかりと完成させないとパッケージデザインになりませんし、入稿もできません。
AIは「こんなデザインができますよ」と多数のデザイン案のようなものを提示することはできますが、あくまで「最終案」を選ぶのは人間です。だから私は、パッケージデザイナーの「役割」が変わるのではなく、「求められるもの」が変わっていくように思います。

ちなみに、AI関連のサービスや情報は、その多くが無償で提供されています。それは、AI業界に「会社の規模に関係なく、みんなが使えるものを」というオープンな開発マインドがあるからです。だから事業規模の大小に関係なく、多くの人にAI活用を検討していただきたいですね。

AIに興味がある「ぱっけーじん」たちへ。まずAIツールに触れることから始めてみよう!

――AIに興味はあるけれど、どのように活用すればいいかわからない」という「ぱっけーじん」におすすめの勉強法はありますか。

まずは、「Midjourney」や「Stable Diffusion」といったAI画像生成ツールを使ってほしいですね。YouTubeに画像生成の方法について解説する動画がたくさん上がっているので、参考にするとよいと思います。実際に触ってみることで、「AIはこういうことができるんだ」という実感がわくと思います。また「AIこういうことは不得意なんだ」ということもわかります。

私自身は「G検定」という検定の勉強をして、AIの知識を身につけました。ただ、AIを使うのにプログラムに関することまで学ぶ必要はないので、「AIっておもしろい。もっと学びたい!」と思った方にのみおすすめします。

――「習うより慣れろ」ということでしょうか。

もちろん、AIは進化し続けているので、常に新しい技術を学ぶ姿勢も大切です。

AIはチューニングが可能で、ゴルファーがドライバーの重さを調整して飛距離を伸ばすように、AIも使う人が自分好みにチューニングして、パフォーマンスを高めることができます。操作に慣れてきたら、チューニングにもぜひ挑戦してほしいですね。「自分好みにアレンジしたツール」を使いこなすことで、デザインの表現領域が広がるかもしれませんよ。

いずれにしても、AIの活用はまだ始まったばかり。これからでも全然遅くありません。多くの「ぱっけーじん」のみなさんにAIを活用していただいて、一緒にパッケージデザイン業界を盛り上げていきたいですね。

パッケージデザインに「AI活用」という新しい風を吹き込んだ小川さん。小川さん自身も一人の「ぱっけーじん」であり、だからこそ「AIを活用して、パッケージデザイン業界を盛り上げていこう」とする情熱が、言葉の端々から伝わってきました。今後、AIツールを手に入れた「ぱっけーじん」たちはどのように活躍していくのでしょうか。「ぱっけーじん」たちの未来にご注目ください!

<著書紹介>
『売れる商品・サービスを生み出す 会社を成長させるデザイン力』
日本能率協会マネジメントセンター

デザインが会社を成長させるドライバーになる――「企業理念」「事業開発」「商品」「ブランディング」の4つの視点から、デザインが経営にもたらす力について詳細に解説。173ページのColumnで「AIとデザイン」について紹介しています。

『売れるパッケージデザイン』
日経BP

パッケージデザインやデザイナーの持つパワーを企業活動に生かしていくための方法を、150のテーマに分けて解説。「Part2戦略編 第3章パッケージデザインとイノベーション」で、「AIがパッケージデザインをどう変えていくか」について論じています。