信藤 洋二(資生堂クリエイティブ クリエイティブディレクター)

JPDAデジタルマガジンの企画が始まり、7月に編集メンバー全員でタイトル案を持ち寄った。決定した「ぱっけーじん」には、パッケージの作り手たちの魅力を世間一般に広げて行きたいという思いを込めている。
私自身も、多くの人との出会いを通してパッケージの奥深さを教えられてきた。

芸大の学生だった1992年頃、OB訪問で資生堂のパッケージデザイナーとして活躍を始めた工藤青石さんに作品を見てもらう機会に恵まれた。銀座7丁目の資生堂パーラー本店には1階にカフェがあり、硬い表情で待っている私の前に工藤さんが颯爽と現れた。

緊張して何を質問したかまったく記憶していないが、色々なアドバイスをいただいた最後に、「自分はフリーランスのつもりでデザインしている」と話されたことだけは良く覚えている。
その言葉が示すとおり、工藤さんは担当された商品で世界中のデザイン賞を次々と受賞され、退職されるまで一貫してその姿勢を貫かれていた。
企業の枠を飛び出して活躍の場を広げていくバイタリティーには、商品デザインに携わる多くのインハウスデザイナーが勇気を与えられたに違いない。会社を卒業された後も、常に一歩先のデザインで驚きを与えてくださるアーティスティックな「ぱっけーじん」だ。

話は変わるが、2006年にパッケージデザイナー9名によるグループ展「PACKAGE MANIA」に参加した。カタログに記載されたインタビューを読み返すと、私は「化粧」をテーマにデザインすることに拘っており、パッケージデザイナーであることは特に意識していないと編集者に答えている。化粧を表現するメディアがたまたまパッケージだったという理由だ。

このグループ展がきっかとなり、JPDAの大先輩である川路ヨウセイさんから声を掛けていただくようになった。

川路さんはお会いするたび、自分はパッケージが大好きでパッケージデザイナーが天職だと嬉しそうに話してくれた。
この言葉が印象的で、私のようにたまたまパッケージに携わっていると考える人間にとっては、パッケージと向き合う真っ直ぐな姿勢がとても尊いことのように感じられた。

カタログのインタビューに川路さんは、「(パッケージで)人と人を軽やかに楽しく繋いでいきたい」と答えられている。まさに、パッケージの魅力を笑顔で広める伝道師のような「ぱっけーじん」だった。
その人柄に惹かれてお菓子のデザインに興味を持ったり、パッケージデザイナーを目指した学生も沢山いるに違いない。

お二人のデザインはジャンルもスタイルも異なっているが、パッケージデザインにおいて「コミュニケーション」を大切にされている点は同じだ。
このサイトをきっかけに、「ぱっけーじん」の輪が広がることを願っている。