石浦 弘幸(サントリーデザイン部 クリエイティブディレクター)

今回のぱっけーじん第1号の特集は「パッケージとAI」なのだが、根っからのアナログ大好き人間として、あえて「パッケージと愛」と読み代えて語ってみたい。

昨今、音楽メディアは、レコードやCDなど有形の「モノ」から、無形のデータやファイルへと形を変えた。一方そんな世の中の動きの裏返しで、アナログレコードが最注目され、ついにCDの総売上げ枚数を超えたそうである。かくいう自分自身も、サブスクの配信サービスによる利便性を享受する一方、夜な夜なレコードを引っ張り出してはじっくり音に浸る二重生活を送っている。

そしてここ数年、個人的に更にハマっているのが、ラジカセとカセットテープである。この便利な時代に、レコードはまだしも、わざわざカセットテープで音楽を聴くというのは、なかなか人には理解されにくい行為かもしれないが、テープを挿入する「カシャッ」という音、再生ボタンを押す確かな手応え、リールの回転と連動して砂時計のように変化していくテープ残量など、それぞれの動きがとても愛おしい。音質はもちろん現代のデジタル音源には及ばないが、クリアすぎない優しさがあり、あの頃の懐かしい空気感に引き戻してくれる。つまり僕にとって「いい音」なのだ。

お小遣いが少なかった中高生の頃、友達に借りたレコードや、ラジオのFM番組をカセットテープにせっせと録音しては自分の音楽ライブラリーを増やしていた。またカセットテープは、アルバムを丸ごとそのままダビングするだけでなく、一緒に聴く相手やシチュエーションを想像しながら曲や曲順を熟考し、自分オリジナルの1本を作る楽しみもある。真新しいカセットテープの包装フイルムを剥がし、お気に入りの曲を録音し、誤録防止のツメを折った後は、ラベル作りという楽しい作業が待っている(かつて「MY FAVORITE SONGS」とか「FOR YOU」とか恥ずかしいタイトルのテープを何本も作ってきた)。タイトルやアーティスト名を手描きでレタリングする時は息を止めて全集中し、市販のインレタ(文字転写シール)を擦る時は常にスペーシング(文字間隔)を意識した。さらにはイラストや写真を加えたりもして、自分オリジナルの表現を施すなど、今にして思えば、カセットテープのラベル作りは、人生におけるパッケージデザインの初期行動だったのではないかと思う。

1本のカセットテープを完成させるには、コンセプト〜タイトルを決め、中身(曲)を構成し、ラベルデザインを作り、最終的にはプレゼンテーションする(聴かせる)という一連のプロセスがある。すっかりおじさんになった今、「音楽のパッケージ」としてのカセットテープのデザインに、現在のスキルと感性を持ちつつ当時の純粋な気分を思い起こしながら取り組んでみたいものだと思う。