ブランドをデザインするということ・前編
『ブランド(brand)』の語源は『焼印』です。かつて、牛などの家畜の牧場名や所有者を明確にするために焼印を押しました。その後、優れた「牛」を見分けるマークとして機能していくことになったと言われています。日本においてデザインの専門会社の草分けであるGKデザイングループの(株)GKグラフィックス 元代表取締役社長・村井大三郎さんに「ブランドをデザインするということ」を語っていただきます。
村井 大三郎 (GKグラフィックス元代表取締役社長)
タッグを組んでブランドデザイン
GKグラフィックスのデザイン領域には、パッケージデザイン、CI, VI,ブランドデザイン、環境グラフィックデザイン、エディトリアルデザイン、インタフェースデザイン、プロダクトグラフィックデザインがあります。
これらの、どの領域のデザインをするにも、常に関わりを持つのはブランドデザインです。デザインには企業理念との整合性を満たすことが求められます。ブランドをデザインするには、ブランドイメージを形成する複数の要素間のバランスを図ること、それには、各要素のデザイン領域とタッグを組み、互いに相関しあうことで、ブランドの成立要件を満たすデザインを行うことが大切です。
ブランドを形成するのは、視覚要素、空間要素、製品要素、作法要素です。各要素に属する様々なアイテムをデザインし、集積するとブランドの全容が見えてきます。ブランドをデザインするということは、特定の企業と、その企業が提供する製品や顧客へのサービスを視覚化し、生活者に分かりやすいブランドイメージを構築することです。
「ブランド価値」とは
世界には「ブランドもの」と呼ばれる製品があります。優れた製品であることを示す代名詞としてその呼称が使われます。なぜそう呼ばれるようになったのか? 製品を使った多くの人が「これはとても品質の良い優れた製品だね」と認めたことが評判を呼び、誰もが知る有名なブランドとなったことで、製品やサービスは「ブランドもの」と呼ばれるようになりました。
本来、製品の価値は、自分で使ってみなければその善し悪しは分かりません。しかし、他人が判定した価値評価を正しいと信じることで、自分は何も悩むことなく安心して、その優れた製品を購入し使うことができます。それはとても楽なことです!
ブランド名そのものが「品質が良く優れた製品であるという価値」をあらわしています。評判を聞いた人たちは自分もその「ブランドもの」を持ってみたい、使ってみたいと憧れを抱くようになるのです。
ブランドデザインの使命
人は日々、人が創り出した様々なモノを使いながら暮らしています。使うモノの善し悪しが生活の質をつくります。良いモノだねと評価された製品やサービスは、人々に受け入れられて初めて世の中に居場所を与えられます。逆に、評価されなかった製品やサービス、企業は、人々から忘れられ、世の中に存在することができなくなり、やがて、消えて行くことになってしまいます。ブランドデザインは、社会に貢献する優れた製品や企業ですよと、自らの価値を正しく伝え認知してもらうという使命を担っています。
企業が社会から認められるためにはどうすれば良いのか? それには、良い製品やサービスを社会に提供し、人々の暮らしを豊かにするために貢献している企業であること、併せて昨今は、人々の暮らしを取り巻く地球環境に配慮しながら活動をしている企業であることを、良く知ってもらわなければなりません。
ブランドデザインは、企業の側からすれば優れた製品やサービスを提供する企業ですよ!と分かりやすく伝えること、生活者の側からすれば、優れた製品やサービスを提供する企業であると容易に分かるものがいい。そのためにはシンプルで記憶に残るメッセージを発信するブランドデザインが望まれます。
近日公開 「ブランドをデザインするということ・後編 -進化してきたブランドデザイン」 に続く