小ネタのパッケージep1.
パッケージの歴史
白石 紗矢香
東洋製罐グループホールディングス
デザインセンター
みなさんは「容器」と聞くと、どんな容器を想像しますか?
周りを見回しただけでも、食べ物を保存するプラスチック容器、貨物を運ぶコンテナなど、大小さまざま色々な容器がありますが、私の勤める東洋製罐グループは、缶やペットボトル、ガラスびん、紙コップなど、日常生活の中でよく使われている容器を作っています。その中で、パッケージの印刷デザインを担当しているのが私、白石です。
私のことを少しお話しますと、
関西の、工事現場から土器が出土することも珍しくない地域で生まれ育ちました。実家にも「須恵器(すえき)」という古墳時代の土器が保存されていたので、「容器」との縁はこの辺りから始まっていたのかもしれません。
物心がつく頃には、缶や箱などの素敵なパッケージに興味を持ち、気に入ったものをコレクションしていました。特にチョコレートのパッケージの魅力に取り憑かれてしまい、パッケージを集めるためにデパートのバレンタインフェアに通っていました。もちろんチョコレート自体も大好きなのですが、ブランドや世界観を「伝える」パッケージがあることで、魅力ある商品が完成するのだと思います。
では、そんなパッケージにまつわるお話を3回にわたってお伝えしていきます。
1回目はパッケージの歴史と役割についてです。
■容器の歴史
約1万年前、人間が集団で生活するようになると、食料を貯えたり分配したりするために、容器が必要になりました。最初は木の葉や貝殻など、天然の素材をそのまま使っていましたが、人類の進化に伴って色々な技術を用いるようになりました。
古い時代のヨーロッパでは、ワインや水を運んだりするために、「アンフォラ」という陶器や、動物の革で作った袋を容器として使っていました。日本でも縄文時代の頃から祭事や日常の器としてさまざまな土器が生まれましたが、私の家にある「須恵器」もどのように使われていたのか気になります。
時代が進むと中に入れるものも多種多様になり、わらや竹、木などを容器の素材として使うものも出てきました。
そこからさらにさまざまな素材を使用して、現在の容器へと発展してきました。
■缶詰が生まれるきっかけはナポレオン?
現代の食生活にとても身近な缶詰やびん詰め食品の原理を発明したのは、フランスのニコラ・アペールという人です。
これには、あの皇帝・ナポレオンが関わっています。
フランスが隣国へ領土を拡大していった時代、皇帝ナポレオンは遠征する兵士が食べ物で困らないように、食品を長く保存するアイデアを賞金付きで募集しました。
それを狙ったのかどうかは分かりませんが、アペールは1804年に調理した食品をガラスびんに詰めて容器ごと加熱し、空気が入らないように栓をすると腐らず長期間保存できることを発明し、賞金をもらったそうです。
ですが、びんは割れやすく持ち運びにも不便。
今度は1810年にイギリスでガラスびんより割れにくい金属容器を使う方法が発明され、缶詰の誕生につながりました。
熱で殺菌し空気を入れないというこの方法は、今でも食べ物を長く保存する基本となっています。
食べ物を好きな時に食べられる便利な生活は、ナポレオンのおかげかもしれません。
そして、中身を伝えるためのラベルを貼る必要が生じ、中身の情報を伝えるデザインの始まりになったと言われています。
■容器の3つの役割
ここでは、容器に必要とされる3つの役割を紹介します。
○守る:使う人のところに届くまで、色々なものから中身をしっかり守る。
○使いやすく:運びやすく、保存しやすく、色々な場面で使いやすい。
○伝える:デザインや色、表示で、中身の情報や注意することなどを正しく伝えて、商品の良さもアピール。
私が惹かれるのは「伝える」の部分ですが、「守る」「使いやすく」も大事な役割で、さまざまな工夫がされています。
容器の歴史や役割については、東洋製罐グループのHPや、当社で一般開放している施設「容器文化ミュージアム」にも詳しい展示があります。こちらもぜひご参照ください。
自分の好きなパッケージデザインに携わる仕事ができるのはとても幸せだと思っています。
そして、子供にもわかりやすいお仕事なので、よく「これ、ママがデザインしたんだよ!」という話をします。「いいじゃん〜!」とか「あんまりかっこよくない」とか評価してくれます(笑)
子供たちにずっと、ママってすごい!と思ってもらえるような、そしていつか誰かにコレクションしてもらえるようなパッケージデザインに携われたら…と、自分の仕事の広がりを思い描きながら、これからも毎日デザインしていきたいです。
次回「小ネタのパッケージep2.」 に続く