2020年12月に創業した「白井屋ホテル」。館内はアートにあふれた25の客室のほか、オールデイダイニング、フランス料理店、タルトの専門店、ベーカリーなどさまざまな部門があります。パッケージデザインに関しては、一人でなく、複数のクリエイターが手掛けている点が特徴です。今回はベーカリーのデザインと2024年1月に発売したぐんまちゃんコラボパッケージの群馬土産について、代表の矢村功さんに話を聞きました。

プロフィール

矢村功(やむら・こう)

1977年、大阪府生まれ。
大阪大学大学院応用物理学科卒業。
広告やマーケティングの仕事を経て、2020年12月、「白井屋ホテル」(群馬県前橋市)代表となる。


©️Shinya Kigure

白井屋ホテル

2020年12月に創業。「インターナショナル・トラベル・アワード(ITA)」の「ザ・ベスト・ニュー・ホテル・イン・ジャパン2021」や英国の旅行雑誌「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー(NGT)」2021年ホテル賞を受賞。どちらも日本では唯一。

群馬県前橋市本町2-2-15
TEL027-231-4618
https://www.shiroiya.com


日常の中の非日常をイメージ

―― 2021年11月にはホテル内の窯で毎日職人が焼き上げる「白井屋ザ・ベーカリー」ができました。ロゴやショッパーはどなたのデザインですか?

関西をベースにヨーロッパでも活躍している、デザイナーの柳原照弘さんです。ベーカリーの内装からトータルでお願いしました。


©️Shinya Kigure

―― パッケージデザインに関しては、どんな話し合いをされたのでしょう。

パンは日常使いのものですけれど、白井屋ホテルはアートな空間なので、やはり少し非日常を感じるようなパン屋にしたいという思いがありました。日常の中の非日常みたいな…。 それで出来たのがこのSとBのロゴと、紫と緑という色使いです。下手をすれば食べ物を美味しくなさそうに見せてしまう寒色を使っています。それをギリギリの線で、成立させている点が流石だなあと思いました。


©️Shinya Kigure

群馬土産にぐんまちゃんパッケージ

―― 確かに。非常に考え抜かれていると思います。そして今年1月にはぐんまちゃんとのコラボが実現しました。

はい。ぐんまちゃんをパッケージに使ったホテルオリジナルの群馬土産を発売しました。 その理由は2つあって、一つは宿泊のお客様から「群馬らしいお土産がほしい」と要望されたこと。もう一つは、群馬県庁の方と話していて、「ぐんまちゃんを使ったお土産があるといいですね」と依頼されたこと。それならやってみようかと。

―― 意外でしたね。

ぐんまちゃんは人気者であるということは、群馬の人間なら誰でも知っていますし、全国的に見ても、非常に強いコンテンツだということもわかっていたので、それを活用したいなと純粋に思ったんです。 ザ・パティスリーの上州焼き菓子詰め合わせセットとザ・ベーカリーの人気商品、カヌレの詰め合わせギフトセットを、ぐんまちゃんのイラストを使ったパッケージで販売することにしました。

―― ぐんまちゃんというとどうしても幼い雰囲気になりがちですが、大人っぽく仕上がっていて驚きました。

その点はもちろん、すごく意識しました。白井屋ホテルにご宿泊のお客様が求めるぐんまちゃんの使い方とはどんなものだろうか。キャラクターものとなると、子供向けというかベタなものが多いので、それとどう差別化するか。

そこで参考になったのがラグジュアリーブランドとキャラクターのコラボです。例えばドラえもんとグッチ。ブランドのラグジュアリー感を損なわず、キャラクターの可愛さを取り入れています。

地元の才能と積極的に協業

―― かなり研究したのでは?

ええ。デザイナーと一緒にいろんなぐんまちゃんを見て、研究しました。そして、キャラクターを大人っぽくて可愛く成立させる二つの法則にたどりついたんです。1つはキャラクターを大きく使い、余分な要素を省くこと、もう1つは小さいものをいっぱい使い、パターン化させること。 その二つの方向性でデザインを検討しました。

――デザイナーはどなたですか?

地元のグラフィックデザイナーで、20代前半の渡辺毅さんです。 すごくセンスが良くて、モチベーションも高く仕事をしてくれています。彼は商業デザインの経験は浅いですが、独自の感性を持っていて、お互い刺激しあいながらデザイン作業を進めています。 白井屋ホテルは国内外のアーティストの作品にあふれた美術館のようなホテルです。その中には地元のアーティストの作品もたくさんある。それと同じように、パッケージデザインも、地元の人材(才能)と積極的に協業して、発信していきたい。何でもかんでも東京から持ってきて、いいものになればいいというのは、地元に根ざすホテルとしては違うのではないかと思っています。

―― ぐんまちゃんパッケージはボックスに印刷する形ではなく、あえて熨斗にして、既存のボックスを覆う形にしていますね。

それは合理性の話で。ホテルにはいろんな部門があります。白井屋自体は非常にニュートラルな存在で、それぞれの部門が色をつけているという感じなので。白井屋で1つボックスを作って、熨斗でそれぞれの部門の個性を出していけばいいかなと思っています。