伊藤 健司

株式会社資生堂
グローバルイノベーションセンター
循環型モデル推進・ガバナンスG 
グループマネージャー


近年、海洋プラスチックゴミ問題や気候変動など、グローバルで喫緊に解決すべき様々な環境課題があります。例えば,海洋などの自然界にプラスチックが長期間変化のないまま浮遊,堆積することの生態系への影響などが多方面から指摘されています。以前から問題提起されている地球温暖化に関してもプラスチックの製造や廃棄時にCO2を排出することが環境負荷を増大させる因子の1つとして指摘されています。
プラスチックは,食品,飲料をはじめ,日用品や化粧品などのパッケージでも多用される材料です。プラスチックが使用される理由は大量生産に適した成形性や強度,バリア性や柔軟性,装飾性などが他の材料よりも優れているためですが,上述の環境負荷を低減することを目指し,材料の選定,構造,使い方の工夫を設計に盛り込むことが重要です。

化粧品容器へ求められること

パッケージは、商品として最初にお客さまの目に留まり、手に触れるものです。そのため、思わず手に取ってみたくなるような意匠や、手に触れたときの感触、持ちやすさ、操作の分かりやすさ、使用性などが求められます。また、それだけでなく、使い終わるまで、中味の品質を一定に保ち、安心して最後まで使い切れるといった中味保護の観点も重要です。特に、化粧品では様々な成分を組み合わせて中味処方を構築しているため、それぞれの処方ごとに適切な容器設計が求められます。これらを実現するため、前述した特徴をもつプラスチックを使用することもありますが、意匠性や機能性だけでなく、環境配慮も考慮した容器設計を行うことが必要です。

社名の由来

ここで、資生堂の社名の由来について紹介させてください。資生堂の社名は、中国の古典、四書五経のひとつ『易経』の一節、「至哉坤元(いたれるかなこんげん) 万物資生(ばんぶつとりてしょうず)」から由来しています。これは、「大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる」を意味しています。つまり、創業当初から、大地に感謝し資源を無駄にしない想いを社名へ込めてものづくりをしていました。たとえば、化粧品容器においては、1926年におしろいのつけかえ(レフィル)容器を販売しており、約100年前から、環境負荷の低い容器設計を行っていました。

資生堂における容器包装への取り組み

現在、資生堂では独自の容器包装開発ポリシー「資生堂5Rs」に基づいた環境負荷軽減、および、サーキュラーエコノミーの実現に取り組んでいます。具体的には、2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標達成に向け、リサイクル可能・リユース可能な設計やバイオマス由来素材・リサイクル素材の利用を促進し、容器の軽量化や「つめかえ・つけかえ」容器、リサイクル可能な単一素材容器の展開などに取り組んでいます。

また、資源循環を促進するために、資生堂は、使用済みプラスチック製容器を収集し、新たな容器へ再生する循環型プロジェクト「BeauRing(ビューリング)」を立ち上げました。BeauRingは、BeautyとRingを掛け合わせた造語で、使用済みの化粧品容器を不要なものとして廃棄するのではなく、新たな容器へ生まれ変わるための資源として循環させるために、一人一人の美しい行動を輪として繋いでいくといった意味が込められています。そのため、本プロジェクトでは、資生堂だけでなく、資生堂以外の企業にも参画を呼び掛けることで、資源循環の輪を広げ、お客さまがより前向きに化粧品を使うことができるサステナブルな社会に貢献していくことを目指しています。本プロジェクトは、2023年4月から実証試験として横浜市内の一部の資生堂化粧品販売店舗、資生堂グローバルイノベーションセンター、そして株式会社ポーラ・オルビスホールディングスと連携し、店舗にて使用済みプラスチック容器の収集を開始しています。

https://spark.shiseido.co.jp/beauring/

これらの活動を通して私たちは,お客さま自身が美しくなるだけではなく,その美しくなるための行動全てが明るい未来に繋がり,そこに幸せや喜びを見いだし笑顔になれるような商品・サービスを提供し続けていきたいと考えています。